『小林多喜二日記』1927年11月23日(第69回)

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https://youtu.be/hO7hPkS9j1c

この頃の多喜二は多くの時間を創作以外のことへ割いていたようなのですが、それらの多くははしょられて、今日の日記は備忘録のように簡潔な部分もあります。
多喜二は書いていませんが、当時すでに表現への弾圧をひしひしと感じられる状況だったようです
今日の日記の最後の方で出てくる言葉は、よく知られているようです



★ 今回出てくる人の人名、作品名  [ ] 内は日記中の表記

[古川氏] / 古川友一 前回の第68回(1927年10月10日)にも出てくる人です。「労働農民党員で、小樽では理論家として知られていた」そうです *1
しんぶん赤旗にも詳細があります。あいにく、記事へ直接のリンクは貼れないので
http://www.jcp.or.jp/akahata/
「敗戦直前、拷問でたおれた古川友一とは?」で検索すると古川氏のことが書かれた記事が読めます


[資本論略解] / マルクス資本論略解 河上肇 著  弘文堂書房 1925  
前回第68回(1927年10月10日)にも出てきた本です。第1巻 第3分冊は、国会図書館デジタルコレクションで公開されています
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971546


レーニン / ウラジーミル・レーニン 1870年〜1924年  ロシアの政治家、革命家  
ロシア革命の主導者、ソビエト連邦やソ連共産党の初代の最高指導者。今年(1927年)に入ってから、多喜二の日記に度々登場するようになります


[瓣證法]  /レーニンの瓣證法 デボーリン著 
この日記の第55回(1927年4月10日)で多喜二は「レーニンの弁証法」は「いい本だ」といい、二回読了したと書いています。その後さらに調べてみたら、ネットで公開されている本がありました。国会図書館デジタルコレクションで1926年出版の本が読めます
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1914443/4
他、「社會問題研究」河上肇著 同人社書店 の67,68,69(1925年〜1926年)にも収録されています。


金融資本論  /  猪俣津南雄著 希望閣  1925年
猪俣津南雄氏の金融資本論について、古川氏が講師となって開かれていた学習会「火曜会」で勉強していたようです *1  この本は国会図書館デジタルコレクションで公開されています
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/926088


[コンミユニスト・マニフエスト] / Communist Manifesto 「共産党宣言」
青空文庫で堺利彦、幸徳秋水訳の「共産党宣言」が読めます
https://www.aozora.gr.jp/cards/001138/files/47057_57486.html


[勞農黨] / 労働農民党 1926年発足  


魁新聞 /  魁新聞社 1924.5.15-創刊 小樽の地方新聞   
当時は日刊で発行された新聞のようです  


[高商] / 小樽高等商業学校  1913年に設立された、官立の商業高等学校。通称は「小樽高商」だそうです。多喜二はこの学校の卒業生。


北方文藝 / 小樽高商文藝會 「小樽高商の大学新聞「緑丘」にあったもののようです。 1927年6月に、多喜二はここへ「田口の姉と記憶」(姉との記憶) を発表しています。


[ゲエリング] / ラインハルト・ゲーリング 1887年〜1936年  ドイツの劇作家  


[中央座] / 当時の小樽市にいくつもあった映画館のひとつのようです


海戦   戯曲/ ラインハルト・ゲーリング作 1917年 
1924年築地小劇場の杮落としで上演された作品です。演出は土方与志


[ローラン] / ロマン・ロラン(ロマン・ローラン) 1866年〜1944年  フランスの作家 


狼  戯曲/  Les Loups ロマン・ロラン作 1898年 10幕
ロランはフランス革命をベースにした革命劇をいくつも書いていて、これはそのひとつのようです。 


[第九シンフォニー] / 交響曲第9番  ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作  1824年初演
多喜二がこの日記で何度も(第4回、第5回他)触れる音楽作品。特に第32回(1926年10月20日) では「ベエトウベンの「第九交響樂」のやうなものが作りたいのだ」と書くほど、彼に影響を与えています。


友田恭助 / 俳優 1899年〜1937年 新劇の俳優  
築地小劇場の公演のため小樽へ来ていたようです。多喜二の勤務する北海道拓殖銀行へ来た理由は、親戚がこの銀行で働いていたからのようです *2


[十一月七日] / ロシア革命記念日 
1917年ロシアで十月革命が起こり、ソビエト政権が樹立された日。この革命は「十月革命」「ソビエト革命」「ボリシェヴィキ革命」とも言われるようです
 

ヴァリエテ  映画 /  原題:VARIETE  1925年 ドイツ サイレント映画  出演 エミール・ヤンングス 他
インターネットのサイト「淀川長治世界クラシック名画撰集」でも紹介されている作品です


復活  映画 / 1927年 アメリカ   監督:エドウィン・カリュー 出演:ロッド・ラロック、ドロレス・デル・リオ他
トルストイの有名な小説『復活』を映画化した作品


[我もし王者なりせば] 我れ若しなり王者なりせば  映画 / 1927年 アメリカ  サイレント映画   監督:アラン・クロスランド  出演:ジョン・バリモア 他
15世紀のフランス詩人フランソワ・ヴイロンの生涯を映画化したもの


[肉體の道] 映画 / 1927年 アメリカ サイレント映画  監督:ヴィクター・フレミング 出演:エミール・ヤニングス他
フレミングはのちに「オズの魔法使い」「風と共に去りぬ」「ジキル博士とハイド氏」などを監督しています


ドロレス・デル・リオ  / 1904年〜1983年 女優 メキシコ生まれ 
1920年〜1930年頃のハリウッドで、サイレント映画からトーキーの頃まで出演。その後はメキシコで多くの映画作品に出演し、メキシコ国内の映画賞「アリエル賞」を何度も受賞。


[ヤニングス]   俳優 /  エミール・ヤニングス 1884年〜1950年  ドイツ出身の俳優  
第一回のアカデミー賞男優賞を受賞  「ヴァリエテ」「最後の人」など多くの作品に出演。
多喜二はエミール・ヤニングスが出演した映画「最後の人」を観ていて(第24回 (1926年9月26日))、その演出はとても気になったようです。


[チャップリンと其他] / チャップリンのこと其他  小林多喜二著  
「シネマ」の十二月創刊号に掲載されたとネットに情報はあるのですが、詳細はわかりません。「小林多喜二全集 第12巻 青木書店1954年」に『チャップリンのこと其他(一九二七年十月)』が収録されています。 他、定本小林多喜二全集. 第9巻 新日本出版社 1968年 にも入っています。 


シネマ  雑誌 / 勝見茂(藤橋茂)氏と和田寿夫氏が編集に携わった小型の雑誌で、頁を綴じないスタイルで発行していたようです。この雑誌に関しては「あの当時、パラマウントの方から金が出た」とも藤橋氏が座談会で語っています *2


山本巡査  戯曲/ 小林多喜二作  複数の多喜二全集に収められている作品です。 
ネットで調べて一番古かったのは「小林多喜二全集 新日本文学会 1948年」で、『山本巡査 一九二八年一月 』が収録されています


女囚徒  戯曲 / 小林多喜二 作 「人間様!」を改題したもの。
前回の第68回(1927年10月10日)で、「「文藝戦線」の十月號に「女囚徒」が出た。」と書いています。この改題や登場人物については第31回(1926年10月18日)で触れています 


その出發を出發した女  小説/ 小林多喜二作 多喜二が初めて書いた長編小説 完成できず中断  
この日記の 第62回(1927年7月8日 )では、「前篇(約百枚)が、どうにか、まづ出来た」と書いています。友人の島田正策氏の談話では、執筆の動機の一つに田口タキさんの生活援助が含まれていたとあります *3  


[防雪林(石狩川のほとり) / 小林多喜二作  未発表作品  改題後『不在地主』となった作品
1927年の11月上旬、「石狩川のほとり」という仮題で北海道の開拓農民を主題にした小説を書いていたそうです *1  このふたつの作品について触れた本は多く1948年頃から現在までいくつも出版されています。


[チエルカツシュ] / マクシム・ゴーリキー作  1895年 ゴーリキー初期の最も有名な代表作 
 この日記の第21回(1926年9月19日)で 多喜二はこの作品の最初の描写を「名文」と書いています 


カインの末裔  小説 / 有島武郎作 1917年
この作品も北海道が舞台です。青空文庫で読むことができます。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000025/files/204_19524.html




*1 『小林多喜二』 手塚英孝著 2008年 新日本出版社 
*2 『小林多喜二のその周圏』 小笠原克著 1998年  翰林書房
*3 『小林多喜二全集』  1952年  富士出版

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