『小林多喜二日記』1927年8月25日夜 (第66回)

file0007569642.jpg


YouTube はこちらから🎵
https://youtu.be/5pOSqElHesQ



前回から少し間が空いてしまいました💧
 
なるべく早くアップロードしたいとつねづね思っているのですが  
今回は特に時間がかかってしまいました💦💦


今日の日記は長い方です 
 
前回からひと月空いているせいもありますが  今回は書き留めることがたくさんあったようで
この8月、多喜二は「労農芸術家聯盟」に加盟し、翌月9月には小樽支部幹事になるなど *1 
とても創作に向いた時間は作れなかったようです

日記の後半で モーパッサンの作品「脂肪の塊」を傑作だと評しています すごく多喜二らしい感じがするのは 褒めたあとに続けて 自作の「酌婦」と好一対の作品だと言うあたりでしょうか。「今迄こういふ作品に眼をつぶつていたのは馬鹿だ」とも書いています
 
この日記の役割が もうすぐ終わるのを感じてしまうのは、今日の日記の最後で書いている自分へかける言葉のせいかもしれません

息遣いまで感じられるような、とても日記っぽい日です
ただ、短い文章がたくさん続いて、朗読向きとは言えないかもしれません
途中休憩が欲しくなりそうな回ですが、最後までおつきあいいただけたら 嬉しいです
 



★ 今回出てくる人の人名、名称、作品名 [ ] 内は日記中の表記

地平線の彼方  戯曲 / ユージン・オニール作「 Beyond the Horizon」 初演は1920年、翌年ピューリッツァー賞を受賞した作品
多喜二が手にした本は調べられなかったのですが この日記の翌年に 世界戯曲全集10 -亜米利加篇/亜米利加(アメリカ)現代劇集』 近代社世界戯曲全集刊行部 北村喜八訳の本が出版されたようです



毛猿  戯曲 / ユージン・オニール作 「The hairy ape 」 1944年には映画にもなっている作品です



芥川龍之介 / 小説家 1892年〜1927年  この日記の第58回(1927年5月8日)にも出てきますが、多喜二は小樽へ来訪した芥川龍之介と里見弴をもてなしたばかりです。偶然にも前回の日記は、芥川が亡くなった日と同じ日付でした



築地小劇場 /  東京都中央区築地にあった劇場  1924年に土方与志、小山内薫が中心となり作った劇団名、または劇場の名称   
築地小劇場は1927年に2度小樽で公演し、その時奔走したのが多喜二を中心とする同人誌「クラルテ」のメンバーだったようです。1933年、多喜二の「労農葬」が行われたのもこの築地小劇場だそうです 



女囚徒『女囚徒』 戯曲 / 小林多喜二 作  「人間様!」を改題したもの 文芸戦線」1927年10月に掲載 
この日記の第31回(1926年10月18日)の日記では改題や登場人物について触れています   



『文藝戦線』 / 1920年頃に発刊されていたプロレタリア文学誌  小牧近江が創刊者のひとりとなっている『種蒔く人』の廃刊を受ける形で発刊された雑誌のようです。小牧近江はパリ留学中にアンリ・バルビュスの「クラルテ運動」に参加し『種蒔く人』創刊にいたったようで、多喜二もバルビュスの小説「クラルテ」は読んでいます。それについては 第23回(1926年9月26日(朝))に長い記述があります 
 

斎藤/ おそらく、この日記に何度も登場する多喜二の親友、斉藤次郎氏のことかと思われます 庁立小樽商業学校から生涯を通じての友人


武田/ こちらも多喜二の友人 この日記にたびたび登場する “武田暹”(たけだ すすむ)氏のことかと思われます


チャップリン/ チャールズ・チャップリン  1889年 〜 1977年 映画監督 映画俳優、コメディアン、脚本家、映画プロデューサー、映画音楽の作曲も手がけています 



[黄金狂] 『黄金狂時代』 /  アメリカ映画  サイレント映画  1925年  チャールズ・チャップリン 監督・脚本・主演  数多あるチャップリン映画のなかでも評価の高い作品 多喜二に言う通り1927年2月7日(第42回)で「二度見た」と書いています



[パンヒヨローフ] / ボリス・ロマショフ のことだと思われます 1895年〜1958年 ロシアの劇作家、1948年にソビエト連邦最高の国家賞「スターリン国家賞」を授与される。朗読ではそのまま「パンヒヨローフ」と読んでいます 



[空気饅頭]『空気まんじゅう』 戯曲/ 1925年 ボリス・ロマショフ作   1927年に築地小劇場で上演されたようです 
ネットで読める戯曲はまだ見つけられないのですが、この作品について書かれたものが「ソヴェート戱典と『空氣饅頭』」というタイトルで国会図書館にありました。 
「革命後のロシヤ文学」昇曙夢著
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1191316



ゴーゴリ/ ニコライ・ゴーゴリ ロシアの小説家、劇作家 ウクライナ人 1809年〜1852年



検察官 戯曲/ 1836年頃 ニコライ・ゴーゴリ作  多喜二の読んだ本はわからなかったのですが、翌年の1928年に刊行された「世界戯曲全集23 露西亜篇・露西亜古典劇集」に収録されています。同じ年に岩波文庫でも発行されているようです



モリエール / フランスの劇作家 俳優 1622年〜1673年 喜劇作品を多く書いている フランスの劇団「コメディー・フランセーズ」の前身はモリエールが率いていた劇団と言われています 日本では学校の美術室にある石膏像でも知られています✨



[カーレル・チャペック]『カレル・チャペック』/ チェコの作家 劇作家 児童文学作家 1890年〜1938年 兄のヨゼフ・チャペックと「チャペック兄弟」で作品を発表。兄ヨゼフはナチスの強制収容所で亡くなっており、プラハには二人の記念碑が建てられているそうです



虫の生活  戯曲/ カレル・チャペック、ヨゼフ・チャペック共作 1922年初演  1925年に 原始社から『虫の生活—昆虫喜劇』が刊行されているようです 翻訳は北村喜八



[ルイヂ・ピルランデルロ] /  ルイジ・ピランデルロ  1867年〜1936年  イタリアの劇作家、詩人、小説家 ノーベル賞作家  作品の人気はいまも高く 各国各地で上演されています



[六人の登場人物] 『作者を探す六人の登場人物 』 / 戯曲   ルイジ・ピルランデロ 作  1921年頃の作  この日記の第42回(1927年2月7日)で読むつもりだと言っていた作品



[ハアゼンクレエエル] 『ハアゼンクレエフエル』/  ドイツの作家のようです 詳細不明   朗読では「ハーゼンクレーフェル」と読んでいます 


『人間』 戯曲/  ハアゼンクレエフエル作 1924年 金星社「先駆芸術叢書 10」小山内薫翻訳 のなかに収録されていて、国会図書館デジタルコレクションで公開されています 
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1017108



劇と評論 /   詳細は不明ですが戯曲と評論を掲載していた雑誌のようです  編集者、発行者は田中総一郎   1922年から1928年ごろまで刊行していた記録がネット上にありました  今回多喜二が読んだのは『劇と評論』4巻8号1927年8月1日 号のようです

  

北村小松  / 1901年〜1964年 小説家 脚本家 劇作家 翻訳家   上記の『劇と評論』には多数の作品が掲載されているようです



『夜の七場』  戯曲/ 北村小松作  雑誌『劇と評論』1927年8月1日号に掲載されているようです   



八田元夫 / 1903年〜1976年  演出家  築地小劇場の第1期生の丸山定夫が隊長を務めていた「桜隊」の演出をしていたようです のちに「ガンマ線の臨終 : ヒロシマに散った俳優の記録」という 桜隊全滅までの回顧録を1965年未来社から出版しています



『社會葬』  戯曲/ 八田元夫作 雑誌『劇と評論』1927年8月1日号に掲載されているようです



[ストリンドベルク]  / ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ  1849年〜1912年  スウェーデンの作家 、劇作家  『痴人の告白』『アスラ』『[青春]青書』 『ダマスカスへ[ダマスクスへ]』など この作家の作品については日記のなかでたびたび触れています



ソクラテス 戯曲/  ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ作  この作品はストリンドベリの遺稿のようです 
1923年『ソクラテス』泰西戯曲選集6 福田久道訳 新潮社、 1924年『三部曲』人類の本第6 新しき村出版部『ソクラテス』外山楢夫訳 など  
国会図書館デジタルコレクションでは 『三部曲』の『ソクラテス』が公開されています
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/977231



ルーテル 戯曲 / ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ作   当時日本では 1922年 外山楢夫訳 曠野社 が出版されています 
これも国会図書館デジタルコレクションで読むことができます 
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/962334


夢の戯曲  戯曲 /   ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ作   
これも国会図書館デジタルコレクションで読むことができます
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/970045



[チエホフ] / アントン・チェーホフ  1860年〜1904年  ロシアの作家  この日記にチェーホフはたびたび登場します  第3回(1926年5月29日)、第14回(1926年8月15日)、第21回(1926年9月19日)、第31回(1926年10月18日)、第53回(1927年3月20日) などなど これ以外にも日記に出てくる作家です




櫻の園  戯曲/ アントン・チェーホフ作 1903年 チェーホフを代表する戯曲のひとつ
日記にある通り「何度目かの」登場です 1927年3月21日(第54回)でも作品への批評を書いています 




トルストイ / レフ・トルストイ 1828年〜1910年  ロシアの小説家、思想家 



闇の力  戯曲 / 1886~1887年頃 レフ・トルストイ作  1895年まで上演禁止の作品だったようです
1924年に出版された「トルストイ戯曲全集」 米川正夫訳 岩波書店 に収録。出版年でいえば多喜二が読んだのはこれかもしれません  
国会図書館デジタルコレクションに入っています
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2627943


岸田國士 /  1980年〜1954年 劇作家 小説家 他翻訳、演出など

   

屋上庭園 戯曲 / 岸田國士作  1926年  
いまもよく上演されている作品です  青空文庫で読むことができます
https://www.aozora.gr.jp/cards/001154/files/44777_37253.html



驟雨  戯曲/  岸田國士作 1926年 
いまでもたびたび舞台で上演される作品です 映画では 1956年 成瀬巳喜男監督 原節子主演で公開されています 
青空文庫で読むことができます
https://www.aozora.gr.jp/cards/001154/files/44776_46696.html


寫眞   戯曲 / 岸田國士作 1927年  一幕  
この作品も青空文庫で読むことができます 
https://www.aozora.gr.jp/cards/001154/files/52307_47169.html


温室の前  戯曲 / 岸田國士作 1927年  一幕
これも青空文庫で読むことができます  
https://www.aozora.gr.jp/cards/001154/files/44780_37254.html


雑誌「改造」 / 1919年に創刊された日本の総合雑誌  佐藤春夫、河上肇、山川均、賀川豊彦の論文などを掲載していたようです また、志賀直哉や幸田露伴、芥川龍之介や谷崎潤一郎など当時の文芸界で人気の高い人たちの寄稿も掲載されていたようです


三つの窓 / 芥川龍之介作 この作品も青空文庫で読むことができます
https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/1125_14253.html 


[ことに中からは] /  もしかしたら当時この三つの短編は 「1」「2」「3」ではなく、「上中下」と表記していたのかもしれないと思い調べたのですが 当時の本が手に入らなくて未確認のままです

 
[もうろふとした風] 小説 /『朦朧とした風』  横光利一作  1927年   翌年1928年 改造社より出版された「新選横光利一集」に収録されています  
 


[横光]  /  横光利一  1898年〜1947年  小説家 ほか 評論、俳句なども作品があります ネットで調べるとたくさん情報があります
 


デマゴーグ / 里村欣三作  文芸戦線 1927年8月号から3回に渡って連載された作品のようです 


  
[里村] / 里村欣三 1902年〜1945年  小説家 プロレタリア文学の作家として当時注目されていたようです 
 


拍手しない男 /  藤森成吉作   国立国会図書館に「新選藤森成吉集 改造社  1928年」に収録されています。 
あいにく本文は公開はされていません
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1192366



[藤森] / 藤森成吉   1892年〜1977年 日本の小説家 劇作家  
日記の第21回(1926年9月19日) ではその頃話題になっていた藤森の作品「磔茂左衛門」「犠牲」の感想を書いています 
1928年にナップ (NAPF・全日本無産者芸術連盟)の初代委員長に就任しています 



天の怒聲 / 葉山嘉樹作  日記によると1927年の雑誌「改造」に掲載されていたようです 
1933年 葉山嘉樹全集 改造社 に収録されています
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001959789-00



[葉山] / 葉山嘉樹  1984年〜1945年 日本の小説家 プロレタリア文学の作家 
この日記にたびたび登場している作家です   葉山嘉樹の作品『セメント樽の中の手紙』は 筑摩書房が平成28年度用の教科書「国語総合」にこの作品を掲載し、”プロレタリア文学の白眉”、国語教材の”定番”と紹介しています

 

ドストエフスキー / フョードル・ドストエフスキー  1821年〜1881年  ロシアの作家、思想家  
多喜二の日記にはなんども名前がでてくる作家です  “超人思想””汎愛思想”などについて多喜二が参考とする作家のひとり。特に『罪と罰』については第20回(1926年9月15日)の日記で詳しく触れています
 


[死人の家]  / ドストエフスキー作  1862年 小説『死の家の記録』のことかもしれません 『死の家の記録』についてはこの日記の第1回(1926年5月26日)に短く感想があります



やっぱり奴隷だ  戯曲/ 村山知義作  1927年 文藝戦線 第四巻第七号 に掲載  人形劇の芝居としてかかれたもののようです 
国会図書館デジタルコレクションに記録がありました
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1592536



[村山] / 村山知義  1901年〜1977年 劇作家、演出家、小説家   多才で幅広い活動をしていたようです 画家、デザイナー、建築家、ダンサーなどの経歴もネット上にあります 妻は児童文学作家の村山籌子 


 
愛慾  戯曲/ 武者小路実篤作  1927年 築地小劇場 演出は土方与志 友田恭助、田村秋子の出演で上演されたようです  
 


[友田] / 友田恭助  1899年〜1937年  俳優  築地小劇場の創立メンバーのひとり  妻は女優の田村秋子  



[田村] / 田村秋子  1905年〜1983年 俳優 夫は友田恭助  映画にも多く出演しています 築地小劇場はこのあと分裂し友田恭助と築地座を結成。戦後は新劇の劇団文学座の名誉座長も務めていたようです 




熊 戯曲 / アントン・チェーホフ作  1888年頃   青空文庫で読むことができます
https://www.aozora.gr.jp/cards/001155/files/52239_42204.html



[舞臺照明はあまり感心…] / 当時、築地小劇場の舞台照明はいろいろ実験的なことを行っていたようです。それに対してのコメントのようです



[福田] /  同級生に同姓のひともいるのですが どの「福田」さんなのかいまのところはわかりません 



[モウパッサン] / ギ・ド・モーパッサン 1850年〜1893年 フランスの作家、劇作家、詩人 自然主義の作家   
この日記に数回でてくる作家のひとりです。日記の第53回(1927年3月20日)では作品、チェーホフとの違いなどを短く書いています



脂肪のかたまり 短編小説/  ギ・ド・モーパッサン 1880年    
青空文庫にないかと探したのですが、いまのところ公開予定はなさそうです
  

酌婦  小説/ 小林多喜二作  ネットで調べると1926年8月 第2回文藝春秋懸賞小説のへ作者名「辻 君子」投稿、「予選通過54篇」に入ったようです。 ほか作者名を変えて送った作品『最後のもの』も「予選通過54篇」に入っています。作者名は「郷 利基」。この「酌婦」についてはこの日記の第15回(1926年8月24日)で触れています 




[ユリエ嬢] /   ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ作  「令嬢ユリー」「令嬢ジュリー」「令嬢ユリエ」など邦訳のタイトル名が複数ある作品
1927年 岩波文庫から「ユリエ嬢」のタイトルで出版。翻訳は茅野蕭々。ほか、1923年〜1925年頃出版の「近代劇大系 第4巻 北欧篇 4」楠山正雄訳。当時注目された作家なのでほかにも翻訳がありそうです



[オニイル] / ユージン・オニール 1888〜1953年  アメリカの劇作家 1936年ノーベル文学賞受賞 
日本でも数多くの戯曲が上演される作家です  この日記の第61回(1927年6月15日)で多喜二がオニールの2作品へ触れたコメントが出てきます 


飢え / ユージン・オニール作  詳細不明です もしかしたら 戯曲「Desire Under the Elms」のことかもしれません   
1926年 築地小劇場出版「楡の木陰の欲望」、1927年 文芸春秋社出版部「楡の下の欲望」。邦題はほかにも「楡の木陰」「楡の下の欲情」等々  


[カイゼル] / ゲオルク・カイザー   1878年〜1945年 ドイツの劇作家  邦訳された作品はいくつもあるようです  


朝から夜中まで  戯曲 / ゲオルク・カイザー作   1912年の作品、カイザーの代表作とも言われている作品  
今回出てきた「空気まんじゅう」と同じく、この作品にも銀行員が登場するようです
国会図書館デジタルコレクションでに読めます
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/962509/2



*1 「小林多喜二とその周圏」小笠原克著 翰林書房 1998年

この記事へのコメント